キャリアプランを描こう! |看護師とキャリア インタビュー|#03|東京女子医科大学病院 診療看護師・手術看護認定看護師 荒木田真子

看護師 キャリアアップ スキルアップ  キャリアアップ

最近では学生のうちに学ぶことも増えた「キャリアデザイン」ですが、実際に臨床現場に入ると目の前の仕事に集中し、キャリアについて考える時間も得られないのではないでしょうか。また経験を重ねるうちに、思い描く自身のキャリア像が変化したり、見失ってしまうことも少なくありません。そんなときに、一つの標石となるが、先を歩く先輩方ではないでしょうか。本連載は、いまでは多くの看護師のマネジメントに携わる看護部長に、どのような経験を通して、自身のキャリアを切り開いてこられたのか、お話をうかがいます。

キャリアを積むことで、診療看護師と手術看護認定看護師として横断的に活動

荒木田真子
東京女子医科大学病院 診療看護師・手術看護認定看護師

病棟での勤務を経験したことで手術看護の大切さを知る

)ご自身のこれまでの看護歴を教えてください

岐阜医療技術短期大学を1999年に卒業後、当院に入職しました。初めは救命救急領域を目指していましたが、当時は新卒での配属はない時代でした。いくつかの就職面接時に看護部長に「救命救急で人が少ない時に応援を呼ぶなら?」と質問したところ、ICU、手術室、循環器領域と答えが返ってきました。入職後は第3希望内にあった手術室に配属。当時は、高度専門医療を対象とした研究所手術室と一般の中央手術室に分かれており、私は研究所手術室の循環器チームに所属し、手術室看護師としてスタートしました。

7年間、専門的な手術看護の経験を積むなかで、小児心臓をより深めたいと考え、小児循環器病棟へ異動しました。その後、一度は病棟でこの領域を極めることも考えましたが、内科管理に携わったことで手術看護の大切さをあらためて実感したのです。そして、やはり手術看護のエキスパートになりたいと思い、再び手術室への異動を願い出ました。上司からは「手術看護領域での痕跡を残しなさい」と言われ、その時点でより専門性の高い手術看護認定看護師の資格取得を目指しました。そして2010年に資格を取得。看護師としてスタートして10年目の年でした。

認定看護師として活動するなかで次のステップアップへ

Q)資格取得後の活動と診療看護師を目指したきっかけは何でしょうか

認定看護師の資格取得後の5年間は、やるべき課題をクリアしながら、あっという間に過ぎました。3年目には関連施設である八千代医療センターに出向し、手術室の小児心臓外科の立ち上げと心臓血管外科のボトムアップに携わり、実践とともにスタッフ育成にも取り組みました。系列病院とはいえ、ゼロから人間関係を築くことは難しく、自分をアピールしながら医師との信頼関係を築いていきました。この経験は貴重なもので、現在につながるものとなりました。

認定看護師としての活動に取り組んで8年目のとき、この先どのような働き方ができるかという新たな壁にぶつかりました。

言うまでもなく、手術看護はわずかなミスも許されない厳しい現場です。患者さんが安全に安心して手術を受けられるためには、医療安全に関する知識は不可欠です。そのことから、自分自身がさらに高度な知識を得ることが必要だという思いに至り、自分に何ができるか、さまざまな方から話を聞きました。そして、大学にあるキャリア開発支援センターで自分の行いたいこと、自分のできることを相談した結果、診療看護師にたどり着き、新たな道に挑戦することになったのです。

診療看護師と認定看護師の2つの視点から周手術期にかかわる

Q)診療看護師になって感じたことをお聞かせください

大学院終了前から看護部長に交渉し、卒後は現所属病院にて、自分自身で卒後臨床研修のプログラムを作成し、外科・内科を含む6診療科で研修を受け、診療看護師に必要な知識・技術を習得しました。そして2019年に心臓血管外科へ出向となりました。研修は温かく支援してくれる医師も多く、さまざまな学びを得られたことも大きな力となりました。

現在は看護部で中央手術室に所属し、心臓血管外科に出向しています。心臓血管外科では、外来・病棟・ICUでの術前術後管理をはじめ、幅広く対応しています。

私のなかでは、診療看護師としての活動の原点に認定看護師としてのこれまでの経験がとても活きており、院内を横断的に活動し、周手術期全体にかかわっています。多くの時間は手術前後の患者管理を医師とともに行っていますが、手術看護としても、実践面での専門的知識・技術の指導をはじめ、現場で直面する問題に対しての相談を受けたり、院内外で勉強会の企画・講師を務めています。

また、昨年立ち上げた心臓血管外科嚥下機能向上プロジェクトでは、抜管後の嚥下機能評価のプロトコール作成や、抜管後はじめて経口摂取する食事内容を見直し、栄養科と相談して通常の病院食ではなく、抜管食という新たな内容を検討し提供することに取り組みました。嚥下訓練では言語聴覚士がかかわるなど、自分一人でできないことを、専門職種をはじめ、看護職を含めた多職種の力を結集させていくことも私の役割だと感じています。

常に学びを継続するなかで、自分自身の方向性を考える

Q)キャリアアップを目指すうえで必要なことはありますか

主体的に学びを継続することが大前提ですが、キャリアアップを考えるうえで、資格を取得した後、自分が何をしたいか、何ができるかを明確にすることが大事です。専門・認定看護師に憧れる新人もいますが、表面的な憧れだけでなく、さまざまな先輩たちの働き方を見て情報収集を行い、自分の目標を具現化するためには何が必要か考えて行動することが大切です。

これまでを振り返ると、初めに認定看護師の資格を取得したことで、知識に基づいた質の高い看護ケアの実践と、外部の講演会の講師や院内外のスタッフ教育に携われたことは、自分自身の成長につながったと考えています。診療看護師となった現在、手術中だけでなく術前術後の患者さんに関わり、患者さんの状態を通して医師と話し合えることは、認定看護師としての礎があったからだと感じています。さらなるステップアップのため、診療看護師の道を選びましたが、これまでの経験は決して遠回りではなかったと感じています。

限られた時間だからこそ患者さんとのコミュニケーションが重要

Q)これまでの経験を踏まえて、手術室看護に求められることはどんなことだとお考えですか

現場でいつも感じていることは、医療者にとって手術は日常的に行われていますが、患者さんにとって手術は一大イベントだということです。だからこそ医師だけでなく、そばに寄り添う看護師の存在は大きなものです。いかに患者さんの緊張感を安心感に変えられるかが、私たち看護師の役割です。術前訪問だけでなく、限られた時間のなかで、言葉だけでなくタッチングなどで患者さんとの意思疎通を図ることが大切です。

手術は医師や多職種のチームワークなくしては行えませんが、そのなかで個人の行動が重要になってきます。患者さんの状態や手術の進行状況を把握し、予測して対応することが手術室看護師の役割です。医師が力を100%発揮できるよう、手術を安全かつ円滑に進めることが患者さんへの侵襲を軽減させることにつながります。

「誠実であること」を心に刻み看護に取り組む日々

Q)ご自身が看護を実践するうえで心掛けていることや好きな言葉はありますか

手術看護はプラスマイナスゼロだと思っています。手術では、手術創以外に傷を作らないのは当然ですが、術中は長時間の同一体位や体位変換などで皮膚障害・神経障害が起こらないようにケアすることや、手術中の体温管理などは知識・技術と細やかな看護技術が必要です。

昔手術を受けたことのある患者さんから、「手術後は寒くて本当につらかった」と話を聞くことがあります。また、子どもでは何度も手術を受ける方もいるので、一度の嫌な経験が次の治療の際のマイナスイメージとなることもあります。一人ひとりの患者さんが、この担当看護師さんでよかったと安心してもらえるような関わり(看護実践)が大切だと思います。そういった意味でも、手術に残るのは手術創部傷のみで、それ以外の心も含めた傷は残さないことを心掛けています。当たり前のことですが、そうした努力を続けることが大事です。手術後に患者さんから「あなたのこの手が本当に安心したよ。ありがとう」と言ってもらえたことは、いまの私のやりがいにつながっています。

看護の仕事を続けてきたなかで「常に誠実でありたい」ということは、いつも心に刻んでいます。これは私自身の好きな言葉でもあります。そして患者さんだけでなく、スタッフに対しても誠実であることが信頼関係の構築につながることを実感する日々です。

まだ診療看護師としての礎を作っている段階のため、今後も自己研鑽を重ね、診療看護師としての仕事の拡大を目指すとともに、後輩たちへの道筋を作っていきたいと思います。

休日はリラックスできて楽しめることを

コロナ禍前はホットヨガに通っていました。しばらく中断していましたが、昨年からピラティスを始めました。どちらもリラックスできる時間ですが、またホットヨガを再開したいと思います。また、週末は友人との食事や自宅でお酒のおつまみを作って楽しんでいます。今年は大学の友人やサークルの先生を交えて温泉旅行に行きたいと思っています。

|病院情報|看護師として成長するための当院の教育の特徴

学びを継続できる環境と資格取得後の活動の場を提供しています

当院には、キャリアを積むなかで専門分野における知識・技術を追究したいという職員が大勢いることも特徴です。専門看護師10領域22名、認定看護師17領域35名、診療看護師5名、特定行為資格1名が在職しています。さらに本学独自の「エキスパートナース制度」という資格制度もあり、取得後は組織横断的な活動や、多職種ともスムーズに連携を図れる環境があります。

当院には資格取得を目指す人に対して、研修への参加は出張扱いになるなどのサポート体制もあり、ステップアップできる環境が整っていることも魅力の一つです。

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